2020年7月 麻酔科勉強会 備忘録
固定記事
COVID-19と対峙する麻酔科医のためのリンク集
COVID-19 pandemicを受けて、欧米ではすでに定時手術を含めた通常診療が制限され、今後日本でも麻酔科医がICUないし手術室でCOVID患者の診療に当たることも十分に予想されます。 以下のリンクが、お役に立てば幸いです。 随時更新していきます。 ...
2020年8月13日木曜日
2020年7月 麻酔科勉強会
2020年7月1日水曜日
心臓麻酔勉強会 テーマ:大動脈弁狭窄症(AS)とAVR (2020/6/25)
ASの分類
加齢性変性(石灰化):最も多い
リウマチ性:近年減少傾向
各交連が癒合する
先天性:二尖弁,一尖弁,四尖弁
→若年性に進行する
“bicuspid aortopathy”
全人口の( )%が先天性二尖弁
ASの定義
Vmax( )m/s, mean PG( )mmHg, AVA( )cm2がsevere ASの診断基準
*AVA indexとは?
Vmax( )m/s, mean PG( )mmHg を一般的に”Very severe AS”と呼ぶ
正常な成人のAVAは3-4cm2
ベルヌーイの定理 maxPG=4 × v2
AVAの計算方法
―planimetry法
―連続の式
AVA = (AreaLVOT x VTILVOT) ÷ VTIAV
*連続の式の問題点
*圧回復現象
―Gorlinの式
診断に困るAS
Low flow, low gradient AS
左室機能低下があり,一回拍出量が低下するため最大流速が4m/s以下だがAVAが<1.0cm2
→ドブタミン負荷エコーが有用
SVが20%以上増加した場合,
―AVA<1.0cm2で,Vmax 4m/s以上→true severe AS
―AVA>1.0cm2→pseudo AS 手術適応外
Paradoxical AS
LVEFは良好だが左室が小さいためSVが小さく,Vmax 4m/s以下だがAVA<1.0cm2
ASの病態生理
ASの本態は,左室に対するpressure overload
*Laplaceの法則
Wall stress= P * R / 2h
→代償機構として左室壁が肥厚する(サルコメアのparallel hypertrophy)求心性心肥大
→左室コンプライアンスの低下,拡張障害
+心筋酸素需要の増加,心内膜下虚血の進行
→最終的には全体的な収縮力低下,遠心性心肥大をきたし心不全が進行する
ASの手術適応(SAVR/TAVR)
症候性のsevere AS→Class I (JCS, AHA)
無症候性のsevere AS→
―LVEF低下(<50%):Class I (JCS, AHA)
―運動負荷試験で症状出現:Class I
―その他の心臓手術と同時:Class I
―Very severe AS:Class IIa (JCS, AHA)
―運動負荷試験で血圧低下:Class IIa
Moderate AS→その他の心臓手術と同時:Class IIa
ASの手術の麻酔のポイント
大原則:低血圧を許容しない
理由は?
―前負荷の維持
CVPとPCWP
―心拍数
―“後負荷“
―リズム
術中の心筋保護
人工心肺離脱のポイント
#AS AVRは、心臓麻酔駆け出しの麻酔科医にとってうってつけの症例といえます。人工心肺手術のエッセンスが詰まっているし、心停止中の心筋保護が良好で、うまく洞調律で立ち上がってくれれば、カテコラミンをむやみに使わなくとも程よく前負荷を維持する限り良好な血行動態が期待できると思います。しかし、落とし穴もあるので注意が必要。ピットフォールについてもみんなで話し合いました。
2020年6月30日火曜日
2020年6月 麻酔科勉強会
2020年3月29日日曜日
COVID-19と対峙する麻酔科医のためのリンク集
2020年3月12日木曜日
Intrathecal opioids(くも膜下モルヒネ投与) Complications in Anesthesia 輪読会 Chapter 88 (2020/3/11)
先日のテーマは、"Intrathecal opioids" (くも膜下モルヒネ)でした。
以下、内容のメモ書きです。
症例:
26歳女性、骨盤位で帝王切開
脊髄くも膜下麻酔でBupivacaine 12mg+Morphine 300mcg投与
術後6時間で全身掻痒感あり、ジフェンヒドラミン50mg iv→効果なし
どうする?
くも膜下モルヒネの単回投与は24時間程度効果が持続する
副作用:呼吸抑制(早期/遅発性)、嘔吐、掻痒感、過鎮静、尿閉など
水溶性オピオイドであるモルヒネの遅発性呼吸抑制は投与後6-12時間後に起こりやすい
脳脊髄液中の頭側への移動で中枢性呼吸抑制が起こる
掻痒感は顔面で最初に起こりやすい:三叉神経の脊髄核はオピオイド受容体が豊富
ヒスタミン遊離が原因ではないとされる
妊娠患者の83%、非妊娠患者の69%と高率で起こる副作用
侵害受容と掻痒感はどちらもC線維で伝達される
痛みのGate theory
セロトニン作動系の関与もあると考えられている→オンダンセトロンやプロポフォールが効果がある
脂溶性オピオイドのフェンタニルのほうが掻痒感の持続時間はモルヒネより短い
対応
H1-blockerの効果は限定的
ナロキソンの低用量持続投与(2mcg/kg/h)が鎮痛効果をリバースせずに掻痒感を改善するという報告あり
Opioid agonist-antagonistの使用(pentazocineなど?)
オンダンセトロン
NSAIDs?
#当院では、帝王切開の麻酔は基本的にsingle-shot-spinalで、morphine 100mcgを使用しています。
ここ最近、術後の静脈血栓塞栓症の予防として、低分子ヘパリンやフォンダパリヌクス、DOACを使用する症例が増加しています。
硬膜外カテーテルの留置ができない症例が多いです。
そこで、くも膜下モルヒネの単回投与であれば、neuraxial hematomaのリスクは最小限にできると考え、術後鎮痛目的に施行する症例が少しずつ増えています。
術後の掻痒感への対応はもちろん、呼吸抑制のモニタリングについて、病棟スタッフへの教育も必要です。
欧米はここ最近めっきり硬膜外カテーテルの使用は減り、intrathecal opioidsを使用することが多いと聞きます。(おそらく硬膜外麻酔が最も行われる術式は、米国では無痛分娩なのではないでしょうか?)
日本人では考えられないような、morphine 500mcgなどの臨床試験もあり、、、本邦でも至適投与量を検討する必要があるのでしょうか。
#古い文献ですが、intrathecal opioidsの有名なmeta-analysisです:
#ASAのNeuraxial opioidsによる呼吸抑制のモニタリングのガイドラインは知っておく必要があります:
Practice Guidelines for the Prevention, Detection, and Management of Respiratory Depression Associated with Neuraxial Opioid Administration: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Neuraxial Opioids and the American Society of Regional Anesthesia and Pain Medicine*
Anesthesiology. 2016; 124(3):535-552.-
今年度入職し,心臓麻酔をやりはじめたばかりの先生方を主な対象に,ASとAVRの基本的事項の確認を行いました。以下,私の作成した簡単なメモ書きです。 AS の分類 加齢性変性 ( 石灰化 ) :最も多い リウマチ性:近年減少傾向 各交連が癒合する 先天性:二...
-
いわゆる開心術では、心筋保護液による化学的心停止が不可欠です。 心臓麻酔とは、すなわち心停止した心臓をいかに”蘇生”させ、全身の循環を維持するか、ということに尽きます。 心筋保護液のpracticalなところというよりは、心筋虚血の生理学的なところを主に皆で振り返りました。...
-
COVID-19 pandemicを受けて、欧米ではすでに定時手術を含めた通常診療が制限され、今後日本でも麻酔科医がICUないし手術室でCOVID患者の診療に当たることも十分に予想されます。 以下のリンクが、お役に立てば幸いです。 随時更新していきます。 ...