先日のテーマは、"Intrathecal opioids" (くも膜下モルヒネ)でした。
以下、内容のメモ書きです。
症例:
26歳女性、骨盤位で帝王切開
脊髄くも膜下麻酔でBupivacaine 12mg+Morphine 300mcg投与
術後6時間で全身掻痒感あり、ジフェンヒドラミン50mg iv→効果なし
どうする?
くも膜下モルヒネの単回投与は24時間程度効果が持続する
副作用:呼吸抑制(早期/遅発性)、嘔吐、掻痒感、過鎮静、尿閉など
水溶性オピオイドであるモルヒネの遅発性呼吸抑制は投与後6-12時間後に起こりやすい
脳脊髄液中の頭側への移動で中枢性呼吸抑制が起こる
掻痒感は顔面で最初に起こりやすい:三叉神経の脊髄核はオピオイド受容体が豊富
ヒスタミン遊離が原因ではないとされる
妊娠患者の83%、非妊娠患者の69%と高率で起こる副作用
侵害受容と掻痒感はどちらもC線維で伝達される
痛みのGate theory
セロトニン作動系の関与もあると考えられている→オンダンセトロンやプロポフォールが効果がある
脂溶性オピオイドのフェンタニルのほうが掻痒感の持続時間はモルヒネより短い
対応
H1-blockerの効果は限定的
ナロキソンの低用量持続投与(2mcg/kg/h)が鎮痛効果をリバースせずに掻痒感を改善するという報告あり
Opioid agonist-antagonistの使用(pentazocineなど?)
オンダンセトロン
NSAIDs?
#当院では、帝王切開の麻酔は基本的にsingle-shot-spinalで、morphine 100mcgを使用しています。
ここ最近、術後の静脈血栓塞栓症の予防として、低分子ヘパリンやフォンダパリヌクス、DOACを使用する症例が増加しています。
硬膜外カテーテルの留置ができない症例が多いです。
そこで、くも膜下モルヒネの単回投与であれば、neuraxial hematomaのリスクは最小限にできると考え、術後鎮痛目的に施行する症例が少しずつ増えています。
術後の掻痒感への対応はもちろん、呼吸抑制のモニタリングについて、病棟スタッフへの教育も必要です。
欧米はここ最近めっきり硬膜外カテーテルの使用は減り、intrathecal opioidsを使用することが多いと聞きます。(おそらく硬膜外麻酔が最も行われる術式は、米国では無痛分娩なのではないでしょうか?)
日本人では考えられないような、morphine 500mcgなどの臨床試験もあり、、、本邦でも至適投与量を検討する必要があるのでしょうか。
#古い文献ですが、intrathecal opioidsの有名なmeta-analysisです:
Benefit and risk of intrathecal morphine without local anaesthetic in patients undergoing major surgery: meta-analysis of randomized trials
#ASAのNeuraxial opioidsによる呼吸抑制のモニタリングのガイドラインは知っておく必要があります:
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