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COVID-19と対峙する麻酔科医のためのリンク集

COVID-19 pandemicを受けて、欧米ではすでに定時手術を含めた通常診療が制限され、今後日本でも麻酔科医がICUないし手術室でCOVID患者の診療に当たることも十分に予想されます。 以下のリンクが、お役に立てば幸いです。 随時更新していきます。 ...

2020年1月29日水曜日

心臓麻酔勉強会 テーマ:プロタミン 2020/1/28

専攻医のF先生が,プロタミンについて非常にわかりやすくまとめてくれました.

【基本事項】
プロタミンはアルギニンを多く含むポリペプチドである
サケの精子に含まれる成分である
歴史的にはインスリンと組み合わせることで吸収を遅延させ,効果を延長させるために用いられた(NPH製剤)
ヘパリンにも同等の効果を期待して用いられたが,逆にヘパリンを不活化することが発見された
硫酸化合物と塩化化合物があり,後者のほうが分解されにくい(臨床使用されるのは硫酸プロタミン)

【作用】
プロタミンはアルカリ性で,陽性に荷電しており,ヘパリンと1:1で結合し結晶化する
(ヘパリンは酸性で,陰性に荷電している)
単独での投与や過量投与ではわずかな抗凝固作用を発揮する

・ヘパリンを中和する:ヘパリン-ATIII複合体を分解し,ヘパリンと安定した複合体を形成する ※分子量が小さいヘパリンほど中和されにくい
・凝固の阻害:トロンビン合成阻害,第V/VII因子の活性化阻害
・血小板機能の減弱:血小板の活性,凝集を阻害 一過性に血小板数減少させる
・線溶の促進

【副作用】
プロタミン反応の分類
・Type I:低血圧 ヒスタミンの遊離,血管内皮細胞からのNO放出
・Type II:anaphylactoid reactions リスク因子:プロタミンによるアナフィラキシー様反応の既往,NPH製剤の使用歴,魚のアレルギー,精巣摘除術後など
補体古典経路の活性化が関与する
・Type III:肺血管収縮 ヘパリン-プロタミン複合体によって起こる トロンボキサンの放出が原因

副作用の予防に最も重要なのは?→緩徐に投与 10−15min
左心系や大動脈から投与される投与法もある

【投与量の決定】
プロタミン投与量をどう決定するか?
ratio-based, model-based, ヘパリン濃度に基づいて決定(Hepconなどのtitration test)
適切なプロタミン-ヘパリン比は? 0.6~1.0?文献によって異なる
考慮すべきfactor:人工心肺時間(長いほど初期投与のヘパリンの代謝による減衰を考慮する),人工心肺残血の返血法(ヘパリン血 or セルセーバ血),ヘパリンリバウンド

プロタミンの代替薬はある?
PF4, hexadimethrine, メチレンブルーなど…有効性が示されたものはない


#プロタミンについては,BJAの2018年にわかりやすいNarrative Reviewがあります.
Boer C et al. Anticoagulant and side-effects of protamine in cardiac surgery: a narrative review.
Br J Anaesthesia. 2018;120:914-27. PMID:29661409.

2020/1/22 抄読会

Anesthesiology. 2020;132(2):253-266.
Anesthetic Management Using Multiple Closed-loop Systems and Delayed Neurocognitive Recovery: A Randomized Controlled Trial.

術後認知機能障害は周術期のアウトカムとして重要
深麻酔、過剰輸液・過少輸液、過換気がrisk factor
→人間が実際に遵守するのは難しい(適切な麻酔深度、GDT、肺保護換気など)


Closed-loop Automationによる自動麻酔管理は、従来の麻酔科医による手動管理に比べて、術後の認知機能障害の頻度を減らすか?
(編集途中です)

2020年1月22日水曜日

ペースメーカー・ICD植え込み患者の麻酔 Complications in Anesthesia 輪読会 2020/1/21

”Complications in Anesthesia (3rd edition)”の輪読会を行っています。

https://www.amazon.co.jp/Complications-Anesthesia-Lee-Fleisher-FACC/dp/1455704113

当院で最近あったケース
★外科の消化管穿孔の緊急手術で、ペースメーカー植え込み患者の依頼あり。夜中の3時で業者は来院できない。どうする?
→結局マグネットモードを使用した。万が一作動しない場合は、電気メスの干渉でペーシング不全になるリスクを考え、経静脈的ペーシングの使用を考慮したが、問題なく手術終了した。★


CIED=PM+ICD

CIED患者は高齢化により増加傾向にある

胸部Xpで確認:RA、RV lead, ICDのshock lead
CS lead = CRT

ICDはペースメーカー機能をあわせもつ
S-ICD:ペースメーカー機能なし
Leadless pacemaker : VVI(R)のみ

術中の最も多い問題はペーシング抑制と不適切な抗頻拍療法

EMI(electromagnetic interference)
単極型電気メス 対極板の貼る位置に注意 電流がペースメーカーを通らないように
バイポーラは起こしにくい
Ventricular oversensing→pacing inhibition

マグネット
緊急手術にはよい適応(業者がすぐに来れないなど)
不確実性
Leadless PMには使えない

患者がPM植え込み、と言っても実はICDだったりすることもあるので注意

術中の推奨事項
rate responsivenessモードはoffにする
患者の自己脈、リズムをチェック、ペーシング依存かどうか
術中の組織への酸素供給が十分高まるように心拍数を調整した非同期モードにする
ICDは抗頻脈治療(DC, ATP)をoffにする
心電図のフィルターモードをoffにする(ペーシング検知できるようにする)

術後は元の設定に戻し、ちゃんと機能しているかどうか設定確認を行ってもらう
ICDの抗頻脈治療を戻すのを忘れずに。

#モノポーラメスの場合、凝固モードの方がカットモードより電磁干渉が多いというのは初めて知りました。

心臓麻酔勉強会 テーマ:ヘパリン 2020/1/14

Kaplan, Hensley, Gravleeなどの教科書から,テーマをピックアップして若手向けにまとめてディスカッションする勉強会をはじめました.


・ヘパリンとは(           )の一種である. 
・ヘパリンの生体内での生理学的な役割は?
・ヘパラン硫酸とは?ヘパリンとの違いは?生体内での役割は?
・臨床使用されるヘパリンは、主に(    )の小腸もしくは(    )の肺から抽出される.
・未分画ヘパリンの分子量はおよそ(     )Da〜(      )Daで,平均分子量は(      )Daである.
・ヘパリンは生体内で強力な(酸・アルカリ)性であり,(   )性に電荷している.

・ヘパリンはアンチトロンビン(ATIII)と結合し,その活性を(       )倍に高める.
・ヘパリン-アンチトロンビン複合体は,凝固因子のうち主に(     )(     )因子の活性を阻害する.
・低分子ヘパリンは,未分画ヘパリンと比較して(     )因子の阻害作用が強い.これは,(     )因子の阻害にはより長い糖鎖が必要だからである.
・(              )は,純粋に(     )因子の阻害に必要な糖鎖を持った分子である.
・静注用のヘパリンは(          )化合物で,皮下注用は(          )化合物である(吸収率が遅いため緩徐に効果を発揮する).

・ヘパリンの“1単位”とはどのように決定されているか?
・ヘパリンは分子量が大きく,静注したヘパリンはすべて血管内に分布する.その後ヘパリンは(          )細胞に再分布し,一部は(       )系細胞にトラップされる.→ヘパリンリバウンドに関与する.
・ヘパリンの半減期は投与容量に(比例する・比例しない)
・ヘパリンの半減期を遷延させる要素は?

・人工心肺中の適正なヘパリン濃度は,おおよそ(  )(  )U/mLである.

・ヘパリン抵抗性とは?
・アンチトロンビンが欠損していてもヘパリンがある程度抗凝固作用を発揮するのはなぜか?
・ヘパリン抵抗性の原因は?
・ヘパリン抵抗性の治療は?